瓦版 第2号 「サンゴの色素タンパクの色揚げにはどんな条件が必要?」

瓦版第2号のテーマは色素タンパクとその色揚げについてでした。

色素タンパク

前回の瓦版では蛍光タンパクが出てきましたが、今回はそれとは似て非なる『色素』タンパクです。

蛍光タンパクはある光を吸収して別の波長(色)に変化させ蛍光するタンパクでした。これとは違い、色素タンパクはある特定の色素と結合したタンパク質の総称で、特定の光を吸収するだけです。つまり自然光の元で観察すると、色素タンパクによって特定の波長は吸収され、吸収されなかった光が反射して目に届き、特定の色として見えるのです。

例えとして、人の血液に含まれるヘモグロビンがあります。ヘモグロビンはヘムタンパク質と呼ばれる色素タンパクの一種ですが、皆さんご存知のようにその色は真っ赤に見えますね🩸

サンゴの色素タンパクと太陽光

サンゴの色素タンパクは図にもあるようにバイオレット、ブルー、レッドなどの色素タンパクがあります。蛍光タンパクの場合は、蛍光する色に応じて個別の励起波長が存在しましたが、色素タンパクはある同一の波長を吸収する傾向があるようです。永二氏の調査によると、その波長とは600nm付近の比較的長めの波長で、これを『アンバー光』と呼びます

加えて色素タンパクは『色素形成応答』と呼ばれる反応を持っており、なんらかの刺激によりその色素が変化する事があります。

これらの事象を利用して、色素タンパクに対して600nmの波長であるアンバー光をしっかりと当てる事で、目的の色素を強くする、すなわち色揚げする事が可能となるのです。

次に注目していただきたいのは背景に書かれている虹色のスペクトルです。前回第1号とは異なり、こちらは水深1mが比較として貼り付けられています👀

導入部分でも記載したように、可視光線は水中ではさらに減衰します。特に波長の長いものは減衰が強く、前回の10mと見比べて頂きたいのですが、10mと1mではアンバー光の波長強度がかなり違います。この為、色素タンパクが育つ為には自然界では超浅場(例えば1m)の光が必要となるのです。

なので、サンゴの『色素』タンパクを色揚げする為には、アンバー光が必要であり、水槽環境でも高めに設置して照明プログラムの中にいわゆる『白照明(おおよそ400~600nmの幅広い波長を含む光)タイム』を加えてやる必要があるのです🙆‍♂️

raika

青照明だけでなく、白照明も大事とされるのはこういった理由もあるのですね💡
注意

本来深場で生活し、アンバー光を多く受けていないようなサンゴに対してアンバー光を多量に照射したり、全体としてアンバー光の少ない青照明設定のままアンバー光の増強目的に強光を当てることは、サンゴにとって大きなストレスになるリスクが高いので注意が必要です⚠️