光を創る☀️

マリンアクアリウムの駆け出しの頃は、照明は「単に魚をきれいに見せる」、「サンゴの蛍光色を楽しむ」などなど、主には鑑賞目的程度の認識しかありませんでした。ただしそれは大きな間違いで、実は飼育スタイルによっては光は非常に重要かつ調整の難しい項目です。

光は我々人間においても重要な影響を与えています。例えば光を受けることで骨の材料であるビタミンを作り出したり、生活のリズムを整えたり、逆に受けすぎることで日焼けや皮膚ガンを発症する要因になったりもします。さらに植物に至っては、光合成を行うことによってエネルギーを作り出しており、適正な光の有無は死活問題となります。

マリンアクアリウムで飼育する生体は、魚、甲殻類などの動物、そしてサンゴです。特にサンゴは褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンと共生し、彼らが作る光合成エネルギーに大きく依存しています。

この内容だけでも、光は鑑賞目的ではないことはご理解いただけるかと思います。ここではそんなマリンアクアリウムにおける光について学ぶ場にしていこうと思います。

光とは電磁波の一種で、太陽や電球などから発せられます。波長と粒子の特性を合わせ持つもので、馴染み深い存在の割に内容は実は難しいです💦

アクアリウムにおいては太陽から発せられる光、すなわち太陽光をある程度把握する必要があります。太陽光は文字通り太陽から発せられる光で、地上に到達するまでに減衰し、主に紫外線、可視光線、赤外線などが含まれます。

マリンアクアリウムでは主にその中でも一部の紫外線と可視光線が重要となります。

可視光線

可視光線は光の一種で、人の目で見ることのできるものです。人が認識できるこの可視光線にはある範囲があり、光の波長で表すと400nm〜780 nmとされています。可視光線より波長が短くなっても長くなっても、人はそれを認識できなくなってしまいま。可視光線の波長は以下の図のように、人の目には色彩の違いとして認識されます。

そして、可視光線より波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼んでいます。

紫外線

紫外線は前述の通り紫の波長よりもさらに短い波長で、可視光線の外にあるため人の目では認識できません。分類としてはより紫に近い近紫外線とこれよりさらに短い波長の遠紫外線(真空紫外線)に大きく分かれます。さらに近紫外線は生物や環境への影響の観点からUVA(315〜400)、UVB(280〜315)、UVC(280未満)に分類されます。これらの紫外線の多くは大気で吸収され減衰し、UVBやUVCはほとんどが遮断されており、地表に届く紫外線の99%がUVAとされています。

海の中の光

紫外線や可視光線についてざっくりとご理解いただいた上で、次にこの光がさらに水の中に入るとどう変化するかを考えます。太陽光は太陽から地球に至るまで、地球の大気圏を通過する際などに徐々に波長が変化して多くは紫外線や可視光線、赤外線となります。これが水の中に入ると、波長は水深に応じて指数関数的にその強度を減少させます。

減少の仕方には特徴があり、波長の長い成分から先に減少します。つまり、赤や橙、黄色などの光は浅い部分から早々に減少し、青や紫の光はより深い部分まで到達することとなります。青と紫の光が他の光に比べて減少しにくいため、深い海は青紫に見えるのです。

まとめると、マリンアクアリウムにおける光を再現するにあたっては主に紫外線や可視光線がが必要。さらに、実際の海中では、紫外線から可視光線の各波長の強度は、その水深によって変化していくという事になります。

海の生き物にとっての光

では海中の生き物にとって、光はどのように利用されているのでしょうか。魚や甲殻類などに対しては昼夜のリズムや鑑賞を目的とした意味合いが強いかと思いますが、サンゴにとっては別物です。サンゴは褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンと共生しており、彼らが作る光合成エネルギーに大きく依存しています。このため、サンゴは共生している褐虫藻に対していかに効率的に光を届けるかを、自らが持っている色彩を多様に変化させて調整しています。つまり、サンゴにとって光は栄養であり、その美しさを左右する重要な因子と言えるのです。

サンゴと光

ではここからは実際にどのように光を管理していけば良いか?

これに関しては、SPECTRAやVital Waveの設計者である明林永二氏のブログ「1.023world」に答えが散りばめられています。当初はそのブログの内容を許可の元にまとめたいと考えていました。ただ、ご存知の方も多いと思いますが、その記事の量は膨大です💦 中々重い腰が上がらなかったのですが、なんと最近になり、SNSで本人による非常に簡潔にまとめられた「コーラルカラーマネージメント瓦版」が配布され始めました✨

ご本人直々にまとめられており、さらに拡散希望とのことでしたので、すぐにご本人に連絡を取りました。当ブログでの瓦版の掲載許可をお願いしたところ、快諾頂けました😆 なので、ここではその瓦版を骨子として、随時情報更新をしていこうと思います。

瓦版 第1号

「サンゴの蛍光蛋白とはどの波長を使用しているの?」

瓦版 第2号

「サンゴの色素タンパクの色揚げにはどんな条件が必要?」

瓦版 第3号

「サンゴの色彩を構成するのは蛍光タンパクと色素タンパクと褐虫藻だ!」

瓦版 第4号

「サンゴの蛍光タンパクと色素タンパクと役割とは?」

瓦版 第5号

「ちょっと待って。そもそもスペクトルって何ですか?」

瓦版 第6号

「蛍光タンパクも色素タンパクも光がないとどうなるの?」

瓦版 第7号

「サンゴがチャイロイシになる原因には何がありますか?」

瓦版 第8号

「サンゴがチャイロイシになる原因が光にはあるの?」

瓦版 第9号

「LEDは水槽の前面から鑑賞しても綺麗に見えないの?」

瓦版 第10号

「蛍光タンパクをギラギラにするにはどうすればいいの?」

瓦版 第11号

「波長はわかったけどサンゴの色揚げに必要な光量は?」

瓦版 第12号

「最近のムーンやルナなどの月光機能って明るくない?」

瓦版 第13号

「サンゴの蛍光タンパクにはどんな種類がありますか?」

瓦版 第14号

「サンゴの白化の原因と白化のプロセスを知ろう!」

瓦版 第15号

「サンゴの色揚げで別の色に変えることはできるの?」

瓦版 第16号

「サンゴは白化しても環境改善で本当に戻るの?」

瓦版 第17号

「サンゴに色んな波長を当てて蛍光チェックしよう!」

瓦版 第18号

「全ての色が正しく撮影できる調光設定を極めよう!」

瓦版 第19号

「どうすればサンゴに必要な波長や光量が分かりますか?」

瓦版 第20号

「オージーは綺麗すぎて色彩構成が見抜けなくて困る!」

瓦版 第21号

「サンゴに必要な光合成量とPPFD量はどう考える?」

瓦版 第22号

「光の性質や法則、光が減衰する条件などを知りたい!」

瓦版 第23号

「スペクトルを意識した計算通りの色揚げを実現する!」

瓦版 第24号

「LED照明って同じビーム角でも光の広がりが違うの?」

瓦版 第25号

「眼の比視感度がもたらす恥ずかしくて大きな勘違い?」

瓦版 第26号

「サンゴの住む海がどんな海なのか一度は見てこよう!」

瓦版 第27号

「UVライトで海のサンゴを蛍光チェックしてみよう!」

瓦版 第28号

「サンゴが産卵した卵はどうやってサンゴになるの?」

瓦版 第29号

「各社サンゴ用システムLEDのスペクトル進化の歴史!」

瓦版 第30号 

「すべての蛍光を等しく撮影できるWBBを極めよう!」 

瓦版 第31号

「昔のサンゴ照明の波長ってどうだったの?メタハラ編」

瓦版 第32号

「昔のサンゴ照明の波長ってどうだったの?蛍光灯編」