瓦版第3号のテーマはサンゴの色彩が何で構成されているかについてでした。
褐虫藻
第3号では新たに『褐虫藻』という言葉が出てきました。褐虫藻といえば、サンゴを飼育されている方ならお馴染みなのではないでしょうか🌱
褐虫藻とは植物プランクトンの一種で、細胞内共生をする渦鞭毛藻類の一種です。共生する代表的な宿主として造礁性サンゴ、イソギンチャク、シャコガイ、クラゲなどがあります。渦鞭毛藻類といえばダイノスを連想する方もおられるかもですが、褐虫藻も同じ仲間というのは不思議な感じがしますね🤔
今回の瓦版ではサンゴに共生する褐虫藻が登場しています。褐虫藻は植物プランクトンですので、光合成色素を使って光合成を行います。そして、この光合成で得られたエネルギー(糖類やアミノ酸)の実に9割をサンゴに供給(代わりにサンゴから二酸化炭素やアンモニアをエネルギー源として受け取る)しているとの報告もあり、サンゴにとって必要不可欠な存在であると言えます。
この褐虫藻が持つ色素は、瓦版に示された光合成色素であるクロロフィルa、クロロフィルc、そして補助色素としていくつかのカロテノイド(カロテン、フコキサンチン、ペリジニン)です。これらの色素が合わさって、褐虫藻の茶褐色〜黄色の体色が作られます。
褐虫藻の波長利用
褐虫藻がどのような光を吸収しているかが瓦版の中央にあるグラフに示されています。茶褐色の背景部分が褐虫藻としての全体の波長吸収量で、450nm付近と660nm付近をピークとした二峰性の形となっています。各波線は褐虫藻の吸収量を各色素別に分けて示されています。各色素の役割としては、光合成を行う中心となるのはクロロフィルであり、カロテノイドは波長を受け渡したり、逆に熱に変換して受け流したりする役割を担っています。
クロロフィルの波線に注目してみると、光合成は青色(450nm付近)と赤色(660nm付近)の波長を利用してエネルギーを作り出していることが分かります。しかし、太陽光はそれ以外の波長も含んでいます。そこで褐虫藻はカロテノイドの力を借りてその他の波長もある程度利用することにより図に示された吸収量となっているのです。
サンゴの色
瓦版の後半にはサンゴの色が主に何から構成されているかが示されています。それが表題にもある『蛍光タンパク』と『色素タンパク』と『褐虫藻』です。サンゴは白いカルシウムの骨格というパレットの上に、これらの色素を併せ持つことで多種多様な色彩を放っているのです。ちなみにこの3要素が抜けてしまった状態を『白化』と呼び、骨格を覆う共肉も剥がれてしまった状態を『白骨化』、『骨格化』などと呼んでいます。
この3要素のうち『褐虫藻』は、サンゴの細胞内に共生しているため、3要素の中では最も内側(骨格側)に存在し色彩の下地となります。この上に蛍光タンパクや色素タンパクが「乗る」ので、基本的には褐虫藻の色合いは前面には出てきません。もし、蛍光タンパクや色素タンパクがない場合は褐虫藻の色だけとなる為、いわゆる茶石の状態となります(図の真ん中)。