瓦版 第4号 「サンゴの蛍光タンパクと色素タンパクと役割とは?」

今回のテーマは蛍光タンパクや色素タンパクの役割についてでした。

紫外線防御

これを担当するのは蛍光タンパクのBFPとCFPです。この二つのタンパク400nm付近の紫外線を吸収し、サンゴにとって比較的無害かつ光合成にも利用しやすい波長にシフトしてくれます。400nm付近の波長は近紫外線に分類され、多くの生体にとって有害です。サンゴは動物のように動いて逃げることが出来ないですが、蛍光タンパクによって有害なものを有益なものに変換するという離れ技を使う事によって、厳しい環境に適応しているのです。

MEMO

第1号にも出てきましたが、UV領域の乏しいシステムLEDを使用していると、そもそもサンゴはUVから自分を守る必要が無くなってしまいます。するとBFPやCFPは次第に退縮していってしまいます。このため、これらの蛍光タンパクを維持するためには一定のUV領域の照射も必要になってくるのです🙆‍♂️ ただし、UVは有害でもある為、過剰な照射は禁物です🙅‍♂️

褐虫藻誘引

文字だけ読むと「?」となる方もいらっしゃるかも知れませんね。サンゴは褐虫藻と細胞内共生していますが、これはサンゴが生まれた後に褐虫藻を自身に取り込むことで完成される共存関係です。ただし、サンゴ自体は生まれて定着してしまうと動くことは当然出来ません💦 このため、褐虫藻の方からサンゴに寄ってきてもらう必要があります。それを誘導しているのがサンゴの蛍光色で、中でもGFPの緑の光は特に誘引する特性が強いと報告されています。我々が飼育しているサンゴを見てみると、一般的には緑系の蛍光が多いと思いますが、こういった理由があるのですね🤔

光合成補助

ここで活躍するのはRFPやYFPです。この2つの蛍光タンパクの励起スペクトルはおおよそ480~560nmにあります。第3号の図を抜粋して下に示しますが、この波長領域はクロロフィルが光合成可能な領域から外れています。

その外れてしまった領域から右にシフトさせ、黄色~赤色の蛍光(560~660nm)に変換する事により、クロロフィルが光合成利用出来る波長に変換しているのです。しかも黄色~赤色の波長は水中では最も減衰しやすい波長であり、それを補充する術は見事です。

減光フィルター

ここで活躍するのは色素タンパクです。色素タンパクは太陽光の強すぎるエネルギーから身を守るフィルターの役割を担っています。しかも、第2号でも紹介されていた『色素形成応答』により、ある程度の強光に対しては、その色素濃度を上昇させる事により適応可能です。

raika

第2号では、これを色揚げに利用する事も紹介されていましたね💡

また、色素タンパクが最も吸収する波長は540~620nm付近でしたが、これは褐虫藻が吸収しにくい波長領域に合致しています。こういった所からも、非常に理にかなった共生関係が伺われるように感じました😲

抗酸化作用

生命がエネルギーを作る呼吸や光合成を行う際には、『活性酸素』と呼ばれる物質が二次的に生成される事があります。これは細胞障害性を有している為、生命は『抗酸化物質』と呼ばれる活性酸素を抑える物質を生成して細胞障害に対抗します。この事を『抗酸化作用』と呼びます。サンゴや褐虫藻が持つ色素にはこの抗酸化作用があります。特に強光下では活性酸素の産生が増加する為、抗酸化作用が弱いとサンゴや褐虫藻が障害されて白化へ繋がります。

どの色素の抗酸化作用が強いかについて研究が成されており、多彩な色素を持つウスエダの結果が瓦版内でも紹介されています。この結果からはGFP>VCPと考えて良さそうですね🤔

MEMO

サンゴの色揚げにはある程度の照射は必要ですが、基礎となる色素や褐虫藻がない状態で行うと強光障害を引き起こして逆にサンゴは白化するという事ですね⚠️ 色揚げを狙って光量を増加させる場合、その個体がそれに耐えうるか否かの判断が大切ですね🤔