瓦版 第5号 「ちょっと待って。そもそもスペクトルって何ですか?」

今回は色んなスペクトルについての解説でした。

MEMO

スペクトルとはあるものを各種成分に分解して、その成分の大小に基づいて配列したものを指します。スペクトルを用いて図示される代表的な項目に「光」があり、今回はさざまな条件下でのスペクトルが説明されています。

太陽光スペクトル

太陽光には様々な光(電磁波)が含まれていますが、ここで図示されたスペクトルは光合成やサンゴの蛍光及び色素タンパクと関係の深い可視光線と一部の近赤外線、近紫外線を含んだ範囲で表されています。

raika

アクアリウムにおいては、上記の波長領域を理解しておけばまず大丈夫だと思います🙆‍♂️

太陽光スペクトルは上記の範囲における地上(水深0m)でのスペクトルです。虹🌈に代表される鮮やかな色彩が印象的ですね。

どの波長強度もかなり強いですが、紫外線領域は大気の影響を受けやすく、減衰傾向が強い事が見て取れます。

海中スペクトル

太陽光スペクトル、つまり地上に降り注ぐ光は水中に入るとさらに減衰します。その減衰の仕方には一定の傾向があり、ここでは日本の黒潮圏のデータを元にそのパターンが示されています。

  • 深くなるほど基本的には減衰する
  • 600nm以上の波長(赤系波長)は特に減衰が強く、水深30mではほぼゼロになる。
  • 500nm~600nmの波長(緑系波長)は赤系波長の次に減衰しやすく、水深30mではブルー光の約50%まで低下する。
  • 400nm~500nmの波長(紫から青系波長)が最も減衰しにくい。

発光スペクトル

ここで示された発光スペクトルとは、ある蛍光タンパクに対してそれを励起する波長を照射した場合に得られるスペクトルの事です。ある波長をピークとした範囲の狭いスペクトル(とんがり山)となる事が多いようです。見え方としては、そのピークとなる波長を中心とした色合いとして認識出来ます。

本文の後半には『比視感度』と言う言葉が登場しています。この言葉は瓦版で初めて知ったので調べてみました💻

まず初めに、『視感度』と言うものがあるようで、これは人間の目が光の各波長を明るいと感じる強さを表したものとされます。そして、この視感度は面白いことに波長によって異なります。つまり、同じ波長強度でも明るいと感じやすい波長や、逆に暗いと感じる波長もあるという事です。そして、この感じやすさには規則性があります。

  • 各波長の感度を測定して並べると、最も感じやすいところを中心に山形となる。
  • 明るい所では555nm付近の光を最も強く感じる。
  • 暗いところでは507nm付近の光を最も強く感じる。

そしてこの最も感じるところを『1』として、その他の波長に対する視感度をその比となるよう、1以下の数で表したものが『比視感度』です。図中で示されている灰色の部分は明所での比視感度にあたります。

この明所比視感度においては、黄緑の色(555nm付近の光)が最も明るくみえ、その両サイドは黄緑から離れるほどに見えにくくなります。つまり紫や青、赤などはかなり暗く見えてしまいます。

図では明所比視感度を背景として、各蛍光タンパクの発光スペクトルが重ねられています。例えばBFPやCFPの発光スペクトルを見てみると、ピークにあたるブルーやシアンの波長は比視感度としてはかなり感じにくい範囲に入り、それらのスペクトルのうち黄緑に近い波長成分の方が見えやすくなっています。これにより、ブルーやシアンの発光スペクトルを見てるはずなのに、実際に感じる色としてはそれよりも緑がかって見えてしまうという不思議な現象が起こるのです😲

励起スペクトル

励起スペクトルは蛍光タンパクを蛍光させるために必要な波長を、強度を固定して順に照射し、それにより得られた発光スペクトルのピーク値を順番にプロットして得られます。少しややこしいですが、こちらの動画で分かりやすく解説されています🙆‍♂️

つまり、この励起スペクトルを見れば、各蛍光タンパクに応じてどの波長を当てればより効率よく蛍光を得られるかが一目瞭然となるのです。蛍光タンパクに関する色揚げを行う際には是非利用しましょう🔥

ワイドバンドブルー(WBB)

これは400nm~500nmの波長を満遍なく含むブルー光を指します。WBBの特徴はサンゴの持つ代表的な蛍光タンパク(BFP、CFP、GFP、YFP、RFP)の励起スペクトルを全て含む事です。RFPだけは励起スペクトルのピーク値が範囲外なので、別途で緑系統を含む波長を当ててやると良いです🙆‍♂️

ただのブルー光ではなくWBBを意識して利用する事で、蛍光タンパクを効率よく励起させる事が可能となり、つまりは色揚げにも繋がります。逆に波長範囲の狭いブルー光(仮にナローバンドブルー:NBB)の場合、蛍光タンパクが効率よく励起されず、蛍光強度が落ちたり、状況によってはサンゴの持つ蛍光タンパクがスイッチor変異してしまう可能性(異なる蛍光タンパクになる)もあります。

raika

見た目のブルー光で判断するのではなく、波長範囲が広い事を意識しましょう🙆‍♂️

サンゴLEDの照明スペクトル

最後にここまでで学んだ事をふまえて、各LED照明のスペクトルを改めて見てみると面白いと思います。LED照明の商品ページなどには、その照明がどういった波長構成なのかが分かるようにスペクトルが記載されているの事があります。ここまで学んでから改めて見れば、その照明は何が得意で何が足りないか等が分かるようになっていると思います。過不足を把握出来れば、ご自身の使用されている照明でもある程度の適切な対応が可能になると思います👍

ちなみにSPECTRA SP200はこのWBBは当然のごとくしっかりカバーされており、さすがの一言です👏