水槽日記 KHについて考える🤔

皆様お疲れ様です🌱

raikaです。

今回はマリンアクアリウム、特にサンゴ飼育では非常に重要な項目である『KH』について学んでいこうと思います。基本的なことも押さえていこうと思いますので、KHの理解は今ひとつ…という方に役に立つ情報だと思います😊 ベテランアクアリストの方々にとっては釈迦に説法となるかも知れませんが、そんな中でもちょっとした知識の追加などがあれば嬉しいです🌱

raika

それでは順番に学んでいきましょう!

KHとは何か?

まずはKHとは何かから押さえておく必要があります。と言うのも、栄養塩や他のミネラルなどと異なりKHは「ある指標」であり、KHという物質を測定している訳ではありません。ここの理解が曖昧なままだと、得られた数値を正確に判断できなかったり、数値そのものの重要性も認識しにくいと思います。

炭酸塩硬度

KHとは『炭酸塩硬度』の事で、KHの呼び名の由来はドイツ語の炭酸塩硬度:Karbonathärteの略語になります。

raika

そもそも『硬度』とはなんなのか🤔

『硬度』とは水1000mlに溶けているCaイオンとMgイオンの含有量を表したものです。高ければ『硬水』、低ければ『軟水』と呼ばれます。飲用水の水質を評価する1つの指標です。硬度にはいくつか種類があり、『総硬度』『炭酸塩硬度(一時硬度)』『永久硬度』『カルシウム硬度』『マグネシウム硬度』があります。これらの関係性は以下の式通りです。

『総硬度』=『炭酸塩硬度』+『永久硬度』

『総硬度』=『カルシウム硬度』+『マグネシウム硬度』

このうち『炭酸塩硬度』とは、その水中に含有されるCaイオンとMgイオンの由来が炭酸塩や重炭酸塩(炭酸水素塩)に限定したものを指します。これらの物質は煮沸する事で沈殿し水中から分離できる為、硬度の中でも調整が可能な部分となり、炭酸塩硬度として分類されています。水中でこれらの塩は溶けてCaイオン、Mgイオン、炭酸イオン(CO₃²¯)、重炭酸イオン(HCO₃¯)として存在しますので、炭酸塩硬度は炭酸イオンと重炭酸イオンの総量から推定値として算出されます。

アルカリニティ

ところでアクアリウム界ではKHの事を『アルカリニティ(アルカリ度)』と呼ぶ事もあります。このアルカリにティとは水中に含まれる重炭酸塩、炭酸塩又は水酸化物などのアルカリ分の量をこれに対応する炭酸カルシウムの濃度に換算したもので、酸を中和する能力の指標です。酸消費量や酸中和容量とも呼ばれ、その溶液が酸に対してどの程度緩衝作用を有するかを表します。

アルカリニティでは炭酸塩、重炭酸塩以外に水酸化物なども測定していますが、飼育水中では大部分が炭酸塩と重炭酸塩で占められており、炭酸塩と重炭酸塩から算出する炭酸塩硬度と意味合い的に近似します。

炭酸塩硬度とアルカリニティの関係

炭酸塩硬度とアルカリニティは測定しているものが非常に似ているため、アクアリウム界ではよく混同され、結果として曖昧な理解のままになりやすくなっています。

しかし、この両者は似て非なるものです。単位もそれぞれ異なっており、炭酸塩硬度はdKH、アルカリニティはmeq/lで、おおよそ2.8dKH=1meq/lの相関関係があります。

そして、実際に我々が試薬で測定しているKHとは、実際にはアルカリニティを測定しそこからKHを換算したものなのです🤔

ここまでは難しい話をしてきましたが、要点としては

  • 炭酸塩硬度とは硬度の一種で、炭酸塩と重炭酸塩の量から換算される指標
  • アルカリニティは溶液中のアルカリ成分の量で、飼育水中では主に炭酸塩、重炭酸塩に依存する
  • 炭酸塩硬度とアルカリニティは混同されているが、似て非なるもの
  • 実際にはアルカリニティを測定し、そこからKHに換算している

raika

これらの要点う踏まえた上で、KHやアルカリニティとは飼育水中の『炭酸塩や重炭酸塩の量を把握するために利用している指標』と理解すると良いかと思います🤔

KHの役割

前項でKHやアルカリニティとは飼育水中の『炭酸塩や重炭酸塩の量を把握するために利用している指標』としましたが、これ以降の記事では統一してKHと呼んで説明していきます。

改めてKHですが、何故この数値が大事なのでしょうか?それを理解するには、炭酸塩、重炭酸塩の役割を知る必要があります🌱

raika

では順に説明していきますね。

pHの緩衝作用

まず、大事なのはpHの緩衝作用です。海水のpHは約8程度の弱アルカリ性であり、マリンアクアリウムでもこの数値を目標にします。

MEMO
pHは学校でも習うので記憶に残っている方も多いと思いますが、液体中の水素イオン濃度を表したものです。0から14までの範囲で、7より低いと酸性、7は中性、7より大きいとアルカリ性です。また、緩衝作用とはある溶液に酸またはアルカリを加えた際に、pHの数値が変わらないようにする作用のことです。

pHは変動によって生体の健康を害したり、サンゴの骨格形成などに悪影響を及ぼす恐れもあります。このため、できる限り推奨値を一定に保つことが重要になってきます。しかし水槽内では、多種多様に存在する生命の光合成や呼吸、大気からの二酸化炭素の溶解など、pHへの影響因子は多く存在します。基本的には水槽内の二酸化炭素の含有量によってpHは変動します。この際に緩衝作用を持つ物質があれば、pHの変動を抑えることが可能となり、結果として生体にとって快適な環境となるのです。

炭酸イオンと重炭酸イオンがどのように緩衝作用を与えるかは、化学式を見ると掴みやすいです。ここで重要な化学式は以下の3つです。

  1. CO2 + H2O ⇄ H2CO3
  2. H2CO3 ⇄ H + HCO3
  3. HCO3 ⇄ H + CO32-

化学式は式を構成する一方の物質の量が増えると、平衡を保つ方向に反応が進みます。このため二酸化炭素が増えると、①式は右に進み炭酸(H2CO3)となります。これによって増加した炭酸は②式を右に進めます。これによって増えた酸は一部消費されて③式を左に進めます。結果的に、炭酸イオンが低下し、酸が増加して、pHは低下します。

この反応系において、炭酸イオンや重炭酸イオンが豊富にあれば、上記の反応が進みにくくなります。

サンゴの骨格の材料

サンゴの骨格の多くはアラゴナイトと呼ばれる物質で構成されています。これは炭酸カルシウムやストロンチウムなどから作られます。炭酸イオンはこの材料の一つである炭酸カルシウムを合成するために必須の材料となります。

このため、特にハードコーラルを多く飼育すると、カルシウムなどとともに炭酸イオンはどんどんと消費されていきます。

植物プランクトンの炭素源

陸上植物は気孔と呼ばれる穴から二酸化炭素を直接取り込み、拡散と呼ばれる現象を利用して効率よく二酸化炭素を取り込んでいます。しかし水中では二酸化炭素の拡散は非常に弱く、また水に溶解して重炭酸イオンとなるので、二酸化炭素を直接取り込むことは効率が悪いです。このため、水中に住む褐虫藻などの植物プランクトンや海藻が光合成を行う際には、重炭酸イオンの状態で葉緑体に取り込むシステムが備わっています。

このため、重炭酸イオンは褐虫藻や海藻の光合成に必須であり、彼らの光合成により消費されます。

raika

上記3つの役割はマリンアクアリウムにとってはいずれも重要な項目であり、炭酸塩、重炭酸塩が非常に大事な物質であることがお分かりいただけたと思います。

KHの管理

最後にKHの管理について説明します。KHは飼育水中でさまざまな役割を持っているため、常に消費されていきます。特に骨格形成の早いSPSを多く飼育する水槽の場合は消費が激しく、さらにSPSはKHの変動により病気になるリスクも上がります

KHの理想値は雑誌やネット情報では7〜11dKH程度が推奨されています。天然の海水は約7dKHであり、これに余裕を持たせた数値なのでしょう。やや高めに推奨されているのは、閉鎖環境ではpHの変動要素がより大きいためではないかと思います。

ただし、少し幅のある数値ではありますが、その範囲であれば変動しても良い訳ではありません。KHの急激な変動は生体に悪影響を及ぼす可能性がありますので、推奨範囲内の目標値を個々で設定して、なるべく変動させないことが重要となります。

理想は天然海水に近い数値が良いのではないかと個人的には考えており、自身の水槽では8dKH前後を目標にしています。KHはCa値と相反する動きを見せるので、KHが高いとCaが推奨値に合わせにくくなります。この点からもあまり高い数値は目標としてはオススメしません。しかし、栄養塩が多い水槽では、藻類の活動が活発化してpH変動要因も増えますので、この場合は高めに設定するのも一案です。

raika

ご自身の水槽の飼育状況に応じて目標値を設定し、定期的にKHを測定しその安定化に注意を払う事がうまく飼育するコツです。

KHの測定

各社から測定試薬が販売されています。

私が使用したことがあるのはRedSeaの試薬です。ほぼ毎日測定していましたが、比較的簡便かつ精密に測定できるのでオススメできる商品だと思います。

現在はFocustronic社のAlkatronicと呼ばれる機材で測定しています。完全自動で任意の間隔でKHを測定してくれる優れものです。ただし、非常に高価な機材です💦 安易にオススメはできませんが、KHを高精度に安定させたい場合には非常に有用な機材です。こちらの記事に詳細をまとめています👇 気になる方は参考にしてみてください。

水槽日記 Alkatronicも設置完了‼️ 設置手順や使用法などレビュー

KHの調整

KHは減少したら何らかの形で添加する必要があります。添加方法にはいくつか種類があり、ご自身の飼育スタイルに合わせていずれかの方法で調整すると良いと思います。

Caリアクター

Caリアクターは水槽内に持続的にカルシウムや重炭酸イオンなどの成分を補充するための機材で、これを使用する事でKHを安定化させる事ができます。

理屈を簡単に説明すると、石灰岩などのメディアを二酸化炭素で溶解し、それにより生じた重炭酸イオンやカルシウム成分豊富な液体を水槽に添加することができます。適宜調整しながら持続的に添加を行うことができるので、KHの低下が激しいSPS主体の水槽でもKHが安定し、一時はミドリイシ飼育には必須と言えるほどの機材でした。ただし、システムを導入するためにはCaリアクター、メディア、二酸化炭素ボンベ、レギュレーター、逆流防止弁、pHモニターなどなど多くの機材が必要です。導入費用や機材の設置場所確保など、ハードルは少し高いです。また、安定して使用できるまでの調整は少し難しいです。その代わり、設定が決まればKHは非常に安定します。

添加剤

炭酸塩や緩衝材が含まれた添加剤を水槽内に添加する方法です。KHのみを調整するものから、製品によってはそれ以外の成分を補充するものも販売されています。ご自身の水槽の状態に応じて選択して投与でき、導入コストはCaリアクターに比べると安価で場所も取りません。ただし、日々自身で添加しますし、在庫管理の手間があります。水槽サイズが大きくなると添加料は必然的に増えますので、添加の手間と維持費はさらに増える事になります。ハードコーラルがそこまで多くなくてKHの消費が少なければ、手間も少なく済むのでオススメの調整法だと思います。私が使用しとことのある添加剤はRedSeaのものです。

当初は液体の添加剤を使用していましたが、水槽内の生体の増加に伴い、徐々に使用量が増えてきました。維持費が気になる程度になってきたため、途中から以下の粉末状のものに切り替えました。自分で溶かす手間がありますが、3倍くらいコストパフォーマンスが良くなります。

 

 

添加量が増えると手間の問題がありますが、ドージングポンプを導入すればその手間を格段に減らせます。コスト面が許せばSPSの豊富な水槽でも管理は問題なくできます。加えて、私が使用しているAlkatronicとDosetronicの組み合わせでKHを含めた各種の添加剤を添加すれば、Caリアクターと同等の効果を得る事が出来ます。導入コストと維持費のデメリットがありますが、Caリアクターに比べてコンパクトで、設定してしまえば調整は自動なので非常に楽です。このため、今はCaリアクターの代わりにドージングでSPS水槽を管理する方法もよく見られるようになりました。

水換え

最後は水換えです。人工海水でも天然海水でも、KHを補充するための炭酸塩が含まれています。このため、水換えを行うことでKHを補正することが可能です。天然海水の場合はKH8程度ですが、人工海水の場合は8〜11程度まで製品によって幅があります。

注意
11程度に設定された製品の場合は、よりKHを強力に補正する力があります。このため、KHが低下した状態でこのような人工海水を用いて大量の換水を行うとKHが大きく変動します。これにより生体が調子を崩すこともありますので、KHが高い人工海水での換水を行う場合は、換水前のKHや換水量には注意してください。

 

今回は『KH』について説明させていただきました。特にサンゴ飼育では最重要とも言える重要な項目なので、しっかり理解した上で安定させていきたいですね。カルシウムやマグネシウムなども、今後少しづつまとめていければと思います。

ではまた👋

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA