水槽日記 ミドリイシ大量破棄 そしてヒラムシの対策

皆様お疲れ様です🌱

raikaです。

サンゴの不調は続いていますが、特にミドリイシの根元白骨化連鎖が止まりません😓 先日、この状況をSNSでアップしたところ、多くのアクアリストの方々からコメントをいただきました。その中で、壊死したサンゴの成分が周囲のミドリイシに悪影響を及ぼす可能性について教えていただきました。自分の水槽と照らし合わせて、その可能性は否定はできないし、置いておいてもいずれは壊死する。そうであれば…と意を決して根本白骨化したミドリイシを大量に撤去しました。これでまだ生き残っているサンゴが救われるなら本望です。ただ、妻にもらったスパスラータだけは破棄する事ができず、フラグ化することにしました。スパスラータを取り出してカットしていると、砕けたカケラの中に何やら蠢くものが…これ、恐らくヒラムシです😓 今日はそのヒラムシについて色々と情報を得ましたので、この機にまとめておこうと思います。

ヒラムシ Flatworm(Polycladida)

ヒラムシはマリンアクアリストの中でも特にサンゴ飼育者であれば聞いたことがある方も多いと思います。うちのスパスラータから出てきたことからも想像がつくと思いますが、ヒラムシは水槽の厄介者の一つです。こちらが出てきたヒラムシです👇

RedSeaのリーフエナジーに付属のカップ内に捕獲しています。非常に小さくて2〜3mmといったところです。実際にじっと見ているとゆっくり動く様子が分かりますが、ぱっと見ではほぼ気付くことはできないと思います。

raika

まずはどんな生体か、敵を知ることから始めましょう。

概説

ヒラムシは扁形動物渦虫綱ヒラムシ目に分類される生物の総称です。分類からややこしいですが、扁形動物とはその名の通り平らな形をした動物です。循環器や呼吸器のような高度な臓器を持たず、拡散作用を利用して酸素などを取り込みます。

扁形動物には、プラナリアやサナダムシなど、聞いたことのあるような生物が含まれていますが、ヒラムシはその中でも基本的には寄生せずに自立して生きている生物になります。肉食性の種が多く、他生物を食べて栄養分を得ます。

中でも我々にとって厄介なのはサンゴを食害するヒラムシです。いくつか種類があるようですが、今回のミドリイシについていたものはAcropora Coral-Eating Flatworm (AEFW)、正式にはProsthiostomum acroporaeAmakusaplana acroporae)と呼ばれるヒラムシのようです。

MEMO

無腸動物 Acoelomorpha

ヒラムシに似たような生物で無腸動物と呼ばれるものがいます。元々は扁形動物門に分類されていましたが、左右相称動物門という新しい項目として再分類されたようです。サイズはおおよそ2mm前後で、泳いだり這ったりして移動が可能です。正規のヒラムシ同様に循環器や呼吸器を持たず、加えてその名の通り腸も持っていません。消化は合胞体と呼ばれる組織で行うことが可能で、肉眼ではヒラムシにそっくりです。実は我が家の前水槽でもヒラムシのようなものが発生した経験があるのですが、今調べてみるとこれにそっくりでした。大繁殖はするのですが、サンゴに大きく悪さする事は無かったです。

無腸動物はサンゴと同様に植物プランクトンと共生して生きるらしく、サンゴ礁と同じ環境に生息しています。光合成エネルギーを利用すると思われ、言われてみると、我が家で発生したものは明るくなると出てきていました。サンゴを食べる事はないですが、これに覆われてしまうと光合成出来なくなるので、そういった面では問題ですね💦

生涯サイクル

話はヒラムシに戻りますが、彼らは卵を産んで増えていきます。卵は主に白骨化したミドリイシの骨格部に塊で産み付けていきます。卵は通常10日前後で孵化し幼生が出てきます。この幼生は生まれたその場のサンゴに定着するか、別のサンゴまで泳いで定着します。定着した場所でサンゴを食べながら栄養を蓄え1〜2ヶ月で性的に成熟し、新たに卵を産んでどんどん増殖していきます。

思いの外、増殖スピードは遅いと感じました。ただ、こっそりと増えている場合が多いため、気づいた時には大繁殖なんて事もあるようです。

MEMO

これは私のフォローしているアクアリストさんの一人の実経験ですが、卵を守る防衛的な本能なのか、多くはサンゴの裏側の目立ちにくいところに卵は産み付けられる事が多いそうです。この為、単に鑑賞しているだけでは初期段階で気づくのが難しいです。普段からサンゴの裏側も可能な限り観察する意識が大事ですね。

ヒラムシの対策

ではいよいよヒラムシの駆除方法について、私が得た情報をまとめていきます。

どんな厄介者駆除方法でも同じですが、やはり色んな側面から対策が練られています。これらはもちろんデメリットのあるものもあり、取捨選択して組み合わせることで、相乗効果を得ることもできそうです。

薬剤

ヒラムシの対策と言えば、薬剤の情報が結構出てきます。各社から駆除剤が販売されてきましたが、現状で手に入れることができるものは限定的な印象です。

そのほとんどは、ヒラムシが付着したサンゴを別の容器に移して、そこで薬浴するタイプのものです。少ないですが、水槽内へ直接添加可能な商品もありました。

これらの薬剤ですが、どれも一定の効果が得られますが、商品の説明通り、必ずしもサンゴや生体に無害とは考えない方が無難かも知れません。薬品自体が例え無害だとしても、例えば取り出す行為などは確実にサンゴにストレスを与えることになります。サンゴにまだ余力があれば有効と考えますが、ポリプも出さずに息も絶え絶えなサンゴに対しては考えものかなと感じました。サンゴの状態を見て使い所を考えれば、より安全に使えると思います。

薬浴タイプ

代表的な薬浴タイプといえばコーラルRXプロではないかと思います。この商品は、普段の購入で、水槽にお迎えする直前の薬浴にもよく使用されるので、お持ちの方も多いと思います。使っている人も機会も多く、一定の安心感がある薬品で普段使いにも持っておいて損はないと思います。

 

もう一つは最近販売されたばかりの新しい商品です。Red Sea社から販売されているDipXです。RedSeaの調べたデータではウミウシ、ヒラムシ、レッドバグなどに対する効果は他社製品(不明)に比べて最も効果が高く、またサンゴに対するダメージも少ないようです。 このデータを信じるのであれば、さしずめコーラルRXプロの上位互換のような印象です。1年以内に使い切るように明示されていますので、購入の際はサイズに注意が必要です。

添加タイプ

代表的なものはフラットワームソリューションと呼ばれる薬剤かなと思います。レビュー記事などもよく見ますが、多くのショップでは売り切れの状態であり、入手が困難になっている印象です。代わりに現在でも入手が容易なものがFAUNA MARINの製品です。カプサイシンを主成分としたもののようですが、比較的新しいためかレビュー記事は見かけないので効果のほどは分かりません。添加量によって、治療的/予防的を使い分けることができるようなので、その辺りは便利かなと思います。

 

生物兵器

もう一つ代表的な方法としては生物兵器、つまり天敵となる生体にヒラムシを食べてもらう方法があります。ヒラムシを食べるとされる生体にはいくつか種類がありますが、薬剤とは違ってより自然に近い手段ですので、水槽環境やサンゴには安全な対策と言えるのではないでしょうか?

ニセモチノウオ

ベラ科の魚で安価、丈夫、餌付きやすいなど初心者にも扱いやすいお魚でもあるため、アクアリウムでは比較的メジャーです。また、サンゴを突くこともなく、サンゴ水槽にも相性が良いです。気が強いのが玉に瑕で、他種はもちろんの事、同種となるとかなり激しく喧嘩をするようです。我が家にもすでに1匹いますが、この子に関しては特に他の魚に悪さする様子はありません。

この子をお迎えしたのは、まさにヒラムシ対策が理由でした。お迎えした時期はヒラムシらしき小さな生物が大繁殖しており、慌てて情報を調べてこの子と、後で紹介するニシキテグリをお迎えしました。ただ、正直、このお魚がヒラムシを食べた瞬間は見たことがありません💦 ただ、繁殖していたヒラムシらしき生体は徐々に減少したので、いくらか貢献してくれていたのではないかと思います。

ネズッポ科

テグリ、スクーターなどと称される魚の総称です。アクアリウムではニシキテグリ、スポッテッドマンダリン、スクーターブレニーなどが代表的です。この魚種は安価、温和ではありますが、餌付けに難があります。我が家には上述したようにニシキテグリがいますが、人工餌を食べているところは確認できていません。独特な泳ぎ方で、地面や岩の上をピョンピョンと飛ぶように移動し、せっせと特有のおちょぼ口で地面を突いています。恐らく見えない程度のプランクトンを捕食しているものと思われますが、仕草は非常に可愛らしいです。人工餌を食べずに、ずっと地面を突いているので、その点からはニセモチノウオよりもヒラムシは捕食してくれているのではないかと感じています。

ブルーラインスラッグ

これは魚ではなくウミウシの一種です。これは自身では飼育したことはありませんが、それなりにしっかりと食べてくれるようです。魚はヒラムシをおやつ程度に考えているけど、ウミウシはヒラムシをメインディッシュ的な位置で考えているのかな?我が家でも購入を検討したことはありましたが、妻から見た目的にNGをいただきました😅

人が頑張る

言葉通りです。スポイトで吸い出したり、サンゴを傷つけない程度に歯ブラシのようなもので磨いたり…。地味ですが間違いなく除去はできます。スポイトでの吸い出しは、やり出すと時間を忘れてできる人もいます笑 以前繁殖した時は、私が仕事に行ってる間に妻がかなりスポイトで取ってくれていました🙏

生涯サイクルを遅らせる

本記事の序盤で、ヒラムシは10日前後で孵化して1〜2ヶ月で卵を生み出すとお伝えしました。このサイクルを遅らせる、つまり孵化までの期間や成熟するまでの期間を遅らせる事が目的です。あわよくば孵化の成功率を下げることも狙います。上述の駆除方法と併せて行う事によって大きな効果が期待できます。

一体どうやってそれを行うかですが、それは水温調整になります。これに着眼して研究したり、その情報を探し出す嗅覚に脱帽です。この情報はフォロワーさんにいただいたものになりますが、しっかりと論文が作られていましたので、確かな情報だと思います。

概要を説明すると、低水温にすることで生涯サイクルの延長と孵化率の低下が得られ、逆に高水温であれば生涯サイクルが短縮し孵化率も上昇します。論文では温度によるサイクルの変化やサイクル時間を把握して、Dipの時期や汚染したサンゴの隔離をどの程度するかなどが例示されていました。個人的にはこの論文の内容からは低水温でサイクルを延長できることを利用すれば良いのではと考えました。

具体的には24度の環境では産まれて卵を産めるようになるまでに平均して56日かかるようですが、21度だと140日程度にまで延長します。21度はサンゴ自身にも影響が出そうなので気が引けますが、22〜23度程度は現実的です。

論文自体はこちらにリンクを貼り付けておきます。

 

今回はヒラムシの生態とその対策についてまとめてみました。私自身も今回学んだことを踏まえて、何かしらの対策を打っていこうと思います🔥

ではまた👋

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