水槽日記 天然海水について🌊

皆様お疲れ様です🌱

raikaです。

先日バクテリアの話を書きましたが、その中で天然海水について少し触れました。

天然海水は、一般に人工海水ではカバーできない様々な物質が含まれます。そのため、多くの場合水槽にとって恩恵を与えてくれます。各地域の天然海水が販売されており、使用された事のある方も多いのではないかと思います。私自身も時折使用するのですが、当初はなんとなく良いものとして適当に色んな産地の天然海水を使用しているだけでした。

ただし、実は採水場所によって期待できる成分、ひいてはその効能は異なります🤔

今回はそんな天然海水について深堀してまとめてみました✍️

天然海水について

人工海水を溶かして得られる海水とは異なり、海から直接採取された海水が天然海水です。もちろん、適当な場所から採取されたものではなく、飼育に適した清澄な海域から採取されたものに限ります。

raika
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まずは天然海水の概要から見ていきましょう。

天然海水の概要とメリット

天然海水は人工海水にはない様々な特徴があります。

まず始めにその成分についてです。以前、塩分についての記事でもご説明しましたが、海水には様々な微量元素が含まれており、その数は80種を超えます。非常に微量なものが多く、その効能自体が未解明な部分もありますが、一般に生体の生活に重要な役割を果たしているとされます。人工海水ではそれらの組成を全て再現することは困難であり、高級人工海水である『Tropic Marin PRO-REEF Meersalz – sea salt 』でも70種類までしか再現出来ていません。しかし、天然海水では当然それらすべてが含まれます

次に、天然海水にはアミノ酸などに代表される有機物や、バクテリアやプランクトン等の微生物の含有が期待出来ます。有機物は微生物から飼育生体に至るまで、生体のエネルギーや酵素などに利用されますし、微生物は水槽の生物多様性に寄与します。

加えて、溶かして利用する人工海水とは異なり、そのまま使えるという利便性も地味に嬉しいポイントです。

天然海水のデメリット

上記のごとく、天然海水には様々なメリットが存在しますが、いくつかデメリットもあります。

まず始めに配送料の問題です。天然海水自体はものによってお値段は意外と安かったりもしますが、これを配送するとなると送料が高くなります。結果的に人工海水に比べて割高になりがちなので、配送が必要な人にとっては値段の問題は大きいかと思います。

次に、天然海水は上記のごとく様々なものが含有されていますが、それゆえに保管や消費期限の問題があります。ものによって異なるとは思いますが、粉末状態で保管できる人工海水には保存性で大きく劣ります。また、ライブロックと同様に、水槽にとって不利益となるものの混入確率はゼロではないかと思います。

海水の自己採水

上記の天然海水については業者や自治体からの購入/配送を前提にお話しておりましたが、人によっては自ら採水するという選択肢もあります。大きなメリットは、海水自体に対するコストがかからない事です。ただし、汲み上げ機材等の初期費用、車移動などの手間/コスト、採水日が天候などにより不安定、汲み上げポイントの選定などなど、敷居は決して低いとは言えません。

表層水と深層水

さて、ここまでは天然海水の概要をお伝えしてきましたが、実は天然海水は大きく二つの種類に分かれます。それが『表層水』『深層水』です。明確に線引きする場合、200mより浅い場所から採水されたものを表層水、それよりも深い場所から採水されたものを深層水としています。その意義としては、太陽の光が届く場所か否かが一つのポイントとなっているようです。

表層水

上記のごとく、水深200mよりも浅い場所から採水された海水で、以下のような特徴があります。

  • 微生物層が非常に豊か
  • 貧栄養塩

浅い海域では太陽光の恩恵を受ける事が出来るので、植物プランクトンに代表される光合成可能な生物が豊富に生存出来ます。それに伴い、動物性プランクトンやバクテリア等の微生物も多彩です。そして、これらの生物が栄養塩を活発に消費するので一般に表層水は貧栄養塩環境となります。

ちなみに河口付近や人が生活し水を汚すような場所は除外して考えて下さい⚠️

アクアリウムに利用するものとしては、サンゴ等の繊細な生き物が生きていける、いわゆるサンゴ礁のような場所から採水した海水を『表層水』として販売していることが多いです。

深層水

こちらは逆に200mよりも深い場所から採水された海水を指します。表層水とは異なり以下のような特徴があります。

  • 富栄養塩
  • 豊富なミネラル
  • 清浄性
  • 低温安定性

表層水とは違い光が表層の1%以下になるため、光合成が行えないことに加え、表層から沈降してくる生物の死骸の影響も重なり、富栄養塩環境となります。

raika
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富栄養塩と言われると少し心配なので、具体的にどの程度かもう少し追求してみました。

ネット上には各自治体や企業が海洋深層水の分析結果を公表しています。これらの結果を複数比較してみました。すると、栄養塩でも特に意識すべきは『リン酸塩』のようです。こちらはものによってはSPS飼育における推奨値の2~5倍程度の場合があります。また、『ケイ酸塩』もそこそこには含まれているので、ケイ酸塩に依存する藻類の発生を誘導する可能性があると考えられます。『硝酸塩』も表層水の10~20倍程度は存在するのですが、そもそも表層水での硝酸塩濃度が微量過ぎるので大きな問題は生じないのではという印象です。調べた範囲ではおよそ0.4~1.5ppm程度でした。

当然、天然海洋深層水で全換水する事はなかなかないと思いますが、比較的多くの割合で換水する場合は注意すべき点です⚠️

メモ

これらの内容は、当然採水される深度や場所によっても多少変動しますので、そこはご考慮ください。一般に、深ければ深い方が、栄養塩は高くなるようです。

また、表層より沈み込んできた物質が長い年月と高い水圧などの影響により水に溶け込み、ミネラルが豊富に存在します。

最後に、表層からの化学物質による汚染がほとんど無く、低温(4度以下)でもあることから細菌などの微生物が非常に少ないです。このため、化学的/細菌学的に清浄度が高いという特徴を持っています。

天然海水の使い分け

さて、天然海水の概要とその種類についてみてきました。

これらの要点を押さえておくと、天然海水を使用するにあたって何を目的に使用するかが明確になり、より効率的に使い分けがしやすくなるかと思います。

raika
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ここからは概要をふまえた上で、私自身の使い分け方法について書いていきます✍️

『表層水』の使い所

まず『表層水』の使い所ですが、これはズバリ『生物多様性』の補充が大きいかと思います。具体的にはプランクトンやバクテリアの補給です。ですので、水槽の立ち上げや、立ち上げ初期の換水は良い適応かと考えます。また、ダイノスやシアノ等の有害藻類の発生時にも理論的に効能が期待できます。

また深層水には劣るものの、人工海水に比べて含有される微量元素の種類は多いです。このため、SPS水槽に代表される低栄養塩(特にリン酸塩)が望ましい水槽におけるミネラル補給にも安心して使えるので、これも良い適応かと考えます。

『深層水』の使い所

次に深層水の使い所は、その豊富な微量元素の補充ではないかと思います。普段使用する人工海水や添加剤では補えないものの補充が可能で、深層水での換水によりサンゴ等の生体の調子が良くなることが期待できます。

また、LPSや海藻、植物プランクトンにとっては、その豊富な栄養塩がプラスに働く事も期待できます。

加えて、深層水はアクアリウム以外でも活用されており、その安定性もあって供給面で表層水よりも有利です。購入出来るところも多く、選択肢も多いかと思います。ただし、簡単に手に入るからと深層水で頻回に換水すると、リン酸塩等が蓄積する場合もあるので、そこは注意が必要です。

今回は天然海水について、その概要や種類、使い方について考察してみました。

皆様の水槽に自然の力が取り込まれ、より良い水景になる事を願います😌

ではまた👋

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