「がん」ってどんな病気? 概要を外科医が解説します。

皆様お疲れ様です。

raikaです。

今日は「がん」について解説していこうと思います。

このテーマについては一回の記事では到底語り尽くせないので、コツコツと今後も記事を積み重ねていくつもりです。

今回は導入編として、「がん」とはどういった病気なのかについてできる限り分かりやすく説明できればと思います。

皆様は「がん」と聞いてどんな事を連想しますか?

がんになったら死を宣告されたようなもの・・・

手術や抗がん剤など治療がとても大変・・・

などなど、とても怖い病気であるイメージが強いと思います。実際、厚生労働省の死因調査でも「がん」は歴代一位の疾患です。しかも、日本人では2人に1人は発症するとされており、非常に身近な病気でもあります。

このように身近で恐ろしい病気だからこそ、きちんとした知識を身につけ普段の生活で「がん」を意識する事は大切だと思います。

「がん」とはどのような病気なのか?

「がん」とは簡潔に申し上げると、体の中にある細胞が異常な細胞に変化し、これが制限なく増殖する病気です。この異常な細胞は非常に生命力、増殖能力が高く、どんどん増殖して発生した臓器の機能を障害します。また、発生した臓器に止まらず、隣り合う臓器にも侵攻し、これらの機能を障害します。加えて、血液やリンパ液の流れに紛れ込み、別の臓器やリンパ節に転移(リンパ節転移、遠隔転移)したり、種を播くように散らばって増える事(腹膜播種)もあります。

どうして異常な細胞が生まれるのでしょうか?

人間の細胞にはそれぞれ寿命があり、寿命が来たり傷んだりすると新しい細胞が生まれ補完されます。この細胞の設計図となっているのがDNA、つまり遺伝子です。この遺伝子も時に傷つきますが、傷付くと修復される機能が生命には備わっています。しかし、稀にその修復機能がうまく機能せず、遺伝子の傷が積み重なった結果として異常な遺伝子が生まれます。これを元に異常な細胞が作られがん細胞となるのです。

こういった発症のメカニズムの性質上、遺伝する可能性はありますが人にうつすといった事はありません

がんの要因

上記のようなメカニズムでがんは発生しますが、そういった遺伝子異常を誘発する原因には様々なものの関与が報告されています。そして、それらの中には予防も可能な項目も複数あります。

大きな要因としては、喫煙感染が報告されています。それ以外にもアルコール(飲酒)、偏った食事、肥満、一部の化学物質、ホルモンなど多岐にわたります。

ここでは大きな要因である、喫煙と感染について概説します。

喫煙

喫煙とがんの関連は社会的にも有名であり、認知度は非常に高いですね。たばこのパッケージ自体にも、肺がんの原因になるとはっきり明記されるようになり久しいです。

喫煙ががんの原因となる理由は、たばこの煙に含まれる成分に由来します。たばこの煙には実に60種類以上の発がん性物質が含まれると報告されています。発がん性物質とは、がんの発症を促す化学物質やウイルスなどの総称です。おおよそではありますが、喫煙者のがん発症率はそうでない人と比べ1.5倍程度と報告されています。

喫煙とがんと言えば、特に肺がんを連想すると思いますが、肺がんの原因だけなのでしょうか?

残念ながら答えは否です。因果関係が確実視されているものとしては口腔癌、鼻咽頭癌、副鼻腔癌、喉頭癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、大腸癌、肝癌、腎癌、尿管癌、膀胱癌、子宮頸癌、卵巣癌、骨髄白血病があります。これほどかと言う事を伝えたかったので、あえて箇条書きしました。

また、喫煙とがんの関係を伝える際に大事なポイントは能動喫煙受動喫煙の2種類の喫煙がある事です。

能動喫煙とは「喫煙者自身が煙を吸い口から吸う事」で、受動喫煙とは「喫煙者以外の人が空気に混ざった煙(副流煙)を吸う事」です。吸い込む量にもよりますが、一般に副流煙の方が毒性成分の濃度が高いことが分かっており、統計学的に受動喫煙でも肺がんの発生率が上昇することが示されています。

感染

感染とがんの関係といえば、ピロリ菌肝炎ウイルスが有名です。それ以外にも特定のウイルス、細菌、寄生虫の中でがんの原因として同定されているものがありますので、ここでご紹介します。

ヘリコバクター・ピロリ:胃がん、胃非ホジキンリンパ腫

HBV:肝臓がん

HCV:肝臓がん

HPV :子宮頸がん、陰茎がん、肛門がん、外陰がん、膣がん、中咽頭がん、口腔がん、喉頭がん

EBV:ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、上咽頭がん

HHV-8:カポジ肉腫

HTLV-1:成人T細胞白血病

タイ肝吸虫、肝吸虫:胆管がん

ビルハルツ住血吸虫:膀胱がん

がんの対策

前述のように、がんの発症リスクは多岐にわたりますが、リスクを回避していても発症する場合もあります。このような怖い病気に対して我々はどのように対策すれば良いのでしょうか?

raika

大切なことは『予防』、それから『早期発見、早期治療』です!

予防

がんの要因でご説明した項目に注意した生活を送ることで、ある程度の予防を行う事が可能となります。具体的には以下の項目が効果的です。

  • たばこを吸わない
  • 肝炎ウイルスやヘリコバクターピロリ菌など自分が感染しているか調べる
  • 適度な運動を行う
  • 適度な体重を維持する
  • バランスの良い食事をする
  • 飲酒は適度に

早期発見、早期治療

がんの治療で大切な事はいかに早い段階で治療を行うことができるかです。

がんという病気は年月と共に徐々に広がります。進行すればするほど、根治的な治療が難しくなり、例え根治治療が施せたとしても、再発してしまう確率が上昇します。逆に言えば、小さいうちであれば、体からがん細胞を駆逐できる可能性が増すのです。

この早期治療介入のために大事なのが早期発見です。ただし、早期の癌では体に異常を感じたり、症状が出現したりすることは稀です。そこでがん検診に代表される健康診断が重要になってきます。自治体や企業が行う検診は欠かさず受ける事が大切です。

以下の記事に検診についても記載していますので参考にしてみてください!

がんの治療

がんの治療は統計学的、科学的な根拠に基づいた「標準治療」が原則となります。その中には手段やコンセプトによって様々な種類が存在します。

治療法には『がんの治癒』を目的とした根治的な治療法『症状を和らげる事』を目的とした緩和療法があります。

治療の方法は手術療法、薬物療法、放射線療法の三大治療法を単独、時には組み合わせて行い治療していきます。最近では第4の治療法として免疫療法も使用される機会が増えてきました。

手術療法

手術療法は根治的な治療を行う要となる事が多いですが、状況によっては姑息手術と呼ばれる症状緩和を目的に行うものもあります。

根治切除は文字通り、がんの発生した臓器をがんを含めて切除します。がんの状況によって切除する臓器の範囲は変わります。また、多くの場合は周囲のリンパ節を同時に切除します。これは、周囲リンパ節が目に見えなくともすでに転移している可能性があるからです。また、隣接する臓器や血管に浸潤している場合、切除可能であればこれらも同時に切除します。

薬物療法

いわゆる抗がん剤を用いた治療です。

抗がん剤には化学療法、内分泌療法、分子標的治療薬などいくつか種類があります。

手術に比べると根治性の高い方法ではありませんが、特定のがん(血液のがんなど)によっては著効する場合もあります。また、手術とは違い、全身に投与する事が可能ですので、進行がんなどにも有効な治療手段となります。

このような性質上、他の治療手段と併用して行うことで、全体としての根治性を高めるための補助的な役割となることが多いです。また、単独での根治性は乏しいですが、一定の抑制効果はありますので、延命や症状緩和に寄与します。

放射線療法

特定の治療用放射線を標的のがんに照射します。これによりがん細胞のDNAに損傷を与えるなどして標的を死滅させます。

一般的には静止した患者に対して照射を行いますが、放射性物質を体内に挿入したり、内服したりする場合もあります。

放射線療法も薬物療法同様に根治性では手術加療に劣ります。また、全身を標的にすることはデメリットの方が高いため、基本は部分的な照射となり薬物療法のような全身への効果は望めません。ただし、手術でもなく、薬物でもないので、これらと併用することで根治性を更に高めることが可能になります。状況によっては手術よりも楽に放射線単独で治癒させることもあります。

 

このように様々な手段がありますので、どの臓器のがんであるか?どのようなタイプのがんであるか?などで、選択する治療方法は様々であり、治療には必ず専門の医師と相談の上進めていく必要があります。

また、標準治療以外にも高度先進医療、自由診療で行われる治療などを含めると多岐にわたります。しかし、これらの治療は適応が限定されものから信憑性の低いものまで様々な治療が含まれます。そういった治療を検討する上でも、まずは標準治療を理解することが賢明です。

 

今回はがん全体についての概要を解説しました。身近で怖い病気であるからこそ、正しい知識のもとうまく付き合う必要があります。

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

ではまた。

 

〈参考〉

厚生労働省 e-ヘルスネット

がん治療.com

国立がん研究センター がん情報サービス

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