COVID-19に対するワクチン、「コミナティ」の臨床試験を解説

皆様、お疲れ様です。

Raikaです。

いよいよ医療者へのワクチン接種が開始されますね!

ワクチン接種に関しては、歴史的背景もあり日本は後進国と言われています。実際に、メディアなどではワクチンに対して後ろ向きとも取れる情報が前面に出がちな事もありました。

私個人は自分で情報を吟味したうえで接種することを決めましたが、皆様はどうされますか?ワクチンは決して強制されて受けるべきものではなく、各個人が正しい知識を得た上で判断するものであると思います。そして、その判断の際には、個人の利益/不利益だけでなく、社会としての利益/不利益も考慮すべきものだと思うのです。

前置きが長くなりましたが、今回は正しい情報共有の一環で、ファイザーのmRNAワクチン『コミナティ』の臨床試験論文を解説しようと思います。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの状況においては、専門科の垣根を超えて、医療者含め全ての方々が一丸となっていく必要があります。その中で、慣れない英語論文で時間を取られるのは大変な方もおられると思いますので、この記事を読んでいただきお役に立てれば幸いです。

著作権の心配がありましたので、直接ブログに論文の図を挿入するのは控えています。

可能であれば、ファイザー社が提供しているこちらを見ながら本記事を読んでいただければ、より分かりやすいと思います。

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それでは早速解説していきますね!

ワクチン開発の背景

新型コロナウイルスは2019年に中国の武漢で初めて確認されました。このウイルスに感染することにより発症する一連の疾患いわゆるCOVID-19は、2020年3月11日にWHOがパンデミックであると宣言して以来、現時点で1億人を超える世界中の人々を苦しめています。確立された治療のエビデンスもまだまだ乏しいのが現状であり、その予防を目的とした安全で有効性の高いワクチンの開発は非常に重要です。

そんな中、発生の数ヶ月後には中国から新型コロナウイルスのゲノム配列の情報が報告されました。これをもとに、新型コロナウイルスの持つスパイク蛋白と呼ばれる部分をコードするmRNA(BNT162b2)が安全性、免疫原性(投与することで抗体の産生を促す性質)が高いと報告されました。

BNT162b2の2回接種は高い新型コロナワクチン中和抗体力価と強力な抗原特異的CD8+T細胞とT h1型CD4+T細胞応答を誘発することが確認され、この結果を元にBNT162b2を用いた今回ご紹介する臨床試験が行われました。このBNT162b2を用いたワクチンが今回承認された『コミナティ』です。

臨床試験の概要

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では、試験のデザインを見ていきましょう。

投与について

本物を投与するワクチン群と偽物(プラセボ)を投与するプラセボ群に1:1の比率でランダムにグループ分けが行われています。

ランダムに振り分けることにより、試験の信頼性を向上させています。

偽物としては人体にとってほぼ影響のない生理食塩水が投与されています。

1回の接種量は30μgで、これを筋肉内注射します。

接種回数は21日の間隔をあけて計2回です。

接種後の急性反応を観察するために、接種後は30分の観察期間を設けています。

試験対象者と評価する項目

Covid-19の既往、免疫抑制療法中の患者、または免疫不全状態の患者さんはこの試験の対象からは外されています。それ以外は、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス感染などを含む多くの安定した慢性病状を持っている16歳以上の成人43,548人を対象として試験が行われました。

主な評価項目は新型コロナウイルスに対する有効性安全性になります。

参加者について

論文のFigure1にあたる部分です。詳細としては、最初に44,820の人が最初に選出されています。これらの人から免疫不全などの除外基準にあたる人が外され、合計43,548人の参加者が無作為に割り付けられました。

そのうちの43,448人が実際に接種を受け、内訳は21,720人がワクチン群、21,728人がプラセボ群になります。

さらに2ヶ月間の経過観察を行なう事ができた人は37,706人で、かつ2回目の接種も受けた人は37,086人、その内訳はワクチン群が18,556人、プラセボ群が18,530人でした。

最終的にこれらのグループで経過観察を最後まで行えたのはワクチン群が18,508人、プラセボ群が18,435人となっています。

また、論文中のTable1にあたる部分では、37,706人の分析を行い、性別、人種、民族、国籍、年齢、肥満度の項目で人数が比較されていますが、ワクチン群とプラセボ群で目立った差はないです。加えて、21%の人が何らかの疾患を持っている人だったとあります。

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我々としては気になるアジア人は1,608人参加していますね。

安全性

以下は厚生労働省が一部データをまとめたものです。論文ではFigure2にあたる部分です。

順に解説しています。

出典:厚生労働省ホームページ

注射部位の反応

この部門では8,183人が解析されています。

全体としてはワクチン群で軽度から中等度の接種部位の痛みが目立ち、ひどい痛みを訴える人は1%未満でした。1回目と2回目での症状の頻度は特に変わらず、若い人でやや強い症状が出やすい傾向にあったようです。症状は2日程度で改善したと報告されています。

赤くなったり、腫れたりすることは比較的稀のようです。

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印象としてはインフルエンザと同じか、少しそれよりは痛む程度でしょうか。

全身性の反応

熱、倦怠感、頭痛、寒気、吐き気、下痢、筋肉痛、関節痛、鎮痛剤使用の項目について調査されています。全体的な傾向としては16〜55歳の若年層、2回目接種後に症状が多く出現しています。中でも多いのは倦怠感と頭痛で、特に2回目接種後では2人に1人が訴えたようです。

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ただ、プラセボ投与群でも一定の人数が同様の症状を訴えていますので、その因果関係はそこまで強いものではないかも知れませんね。

また、発熱に関しては2回目接種後に約10%ちょいで生じる結果が出ています。

発熱しただけ仕事を休む必要がある方もいらっしゃると思います。そういった方は、できれば休みの前日などに接種すると職場に迷惑をかけるリスクが減りますね。

症状は最初1〜2日目で出現し、その後はすぐに解消しています。まれにリンパ節腫脹が出現することもあるようです。

また、重篤な全身反応は全体を通して2%未満の出現率であったとあります。

有害事象

有害事象とはワクチンとの因果関係はさておき、ワクチン接種後に起こった不都合な事象をまとめたものです。

43,252人ので分析され、ワクチン群で27%、プラセボ群で12%の報告がありました。ワクチン群で多いですが、これは先程説明した注射部位の反応や全身性の反応がワクチン群で多く訴えがあったことに由来しています。

重篤な有害事象は両群で差は認めず、接種後の死亡は6名で、2名がワクチン群、4名がプラセボ群であり、こちらもワクチンとの関連はないと判定されています。

有効性

出典:厚生労働省ホームページ

COVID-19に感染したことのない36,523人の解析では、2回目の投与の7日後以降にコロナウイルスに感染した人は、ワクチン群で8名、プラセボ群で162例でした。

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この結果は、BNT162b2が新型コロナウイルスに対して、95%の有効性を示したことになります。

また、論文のTable2では、年齢、性別、人種、民族、BMIなどのサブグループでの解析が行われており、いずれもワクチンの有効性は同程度(90-100%)でした。

注意

サブグループ解析では、十分な人数が得られていないので、今後の統計が期待されます。

最後に初回投与後以降のCOVID-19発症者の推移を時間経過で分析しています。論文ではFigure3にあたる部分です。

合計としてワクチン群では50名、プラセボ群では275名が発症しています。ポイントとしては、ワクチン群ではその8割近くが2回目の接種前に発症しており、特に接種して12日以降は明らかにプラセボ群と発症率で差が出現しています。

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1回目のワクチンを接種して12日程度経つと、免疫力が得られ始めることが示唆されますね。

また、初回ワクチン投与後に発症した重症患者は10例でしたが、9例がプラセボ群、1例がワクチン群からの発症でした。この結果から、『コミナティ』の接種により重症化を防ぐ可能性も示唆されたと言えます。

今回の論文での注意点

約4万人の人が参加した大規模な臨床試験ではありますが、稀な合併症を評価するためには、まだまだデータの蓄積が必要です。また、長期経過の検討はなされておらず、これらに関してはさらなる解析結果の報告に注視する必要があります。

加えて今回の検討では、症状の発現した人を対象にPCR検査を行いCOVID-19を診断しています。このため、無症候性感染、つまり無症状で感染している人の評価はできていません。つまり、ワクチン投与により発症は間違いなく抑えていますが、感染に関してはどこまで抑制しているかまでは正確な評価はできていません。ただし、これだけの有効性が示されていますので、感染に関しても一定の抑制効果が得られている事が推測されます。

以上が解説となります。

海外ではすでに多くの人がこのワクチンを接種し、その有効性が新たに報告されてきています。論文の質も問題なく、有効性、安全性ともに非常に高いもので信頼できる結果だと思います。

内容を皆様方自身でも吟味した上で接種の是非を判断してただければと思います。

それではまた!

引用文献:New Engl J Med. 2020;383:2603-15 Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine

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